垂水市新庁舎建設基本構想
このページでは、垂水市新庁舎建設における基本構想である「垂水市新庁舎建設基本構想」についてご紹介いたします。
はじめに
本庁舎は、昭和32年の火災により旧木造庁舎が焼失し、昭和33年、当時では各市より早く鉄筋コンクリート造で建て替えられました。
その後、業務の多様化、執務室の不足、狭あい化が著しくなり、効率的な事務の執行を図るために増築、別館の取得、内部改修などを行ってきましたが、建築後50数年が経ち、耐用年数を経過していると同時に新耐震基準施行以前の建物であることから耐震性に問題があると考えられます。
平成23年3月の東日本大震災、平成28年4月の熊本震災等、各地で頻繁に発生している大地震や桜島の活発な火山活動への対応が十分行えるとはいえない状況であり、垂水市議会からも、地震や災害から市民の生命や財産を守るため、防災拠点の確保、行政機能の維持といった観点で早急な対応を求められています。
本市では、平成24年2月、庁内職員で構成される垂水市庁舎建設等庁内検討委員会を設置し、庁舎のあり方等の検討を行い、平成29年3月、「新庁舎建設の検討結果報告書」をとりまとめました。また、平成29年6月、学識経験者や市民代表で構成される垂水市新庁舎建設検討委員会を設置し、市民目線による庁舎建設に対する検討が行われています。
本基本構想は、このような検討状況を踏まえ、庁舎整備の基本方針などをまとめたものとなります。
第1章/現庁舎の現状と課題
本市の本庁舎は、本館、新館及び別館で構成されており、各庁舎の現況と面積は次のとおりとなっています。
本館
- 建築年次/昭和33年竣工、昭和35年及び44年増築
- 経過年数/59年
- 敷地面積/3,062.42平方メートル(新館敷地含む)
- 述床面積/2,888.50平方メートル
- 備考/3階建て(一部6階建て)
新館
- 建築年次/平成5年竣工
- 経過年数/24年
- 敷地面積/本館部分に記載
- 述床面積/770平方メートル
- 備考/3階建て
別館
- 建築年次/昭和53年竣工、平成7年取得
- 経過年数/39年
- 敷地面積/486.28平方メートル
- 述床面積/364.56平方メートル
- 備考/3階建て
現庁舎の課題
現庁舎は、昭和33年に建築されて以来、増築を重ね現在に至り、次の問題を抱えていると考えられます。
- 施設・設備の老朽化
- 本館は、建築後50数年が経過していることから、耐震補強や機能の更新が必要になっています。危険箇所については修繕を行っていますが、設備等の更新のためには一部移転をするような工事が必要となっています。また、給排水、空調などの設備等も老朽化が進み機能低下が著しく、年々修繕箇所も増え、補修部品の確保も困難な状況であり、多額の経費を要しています。
- 旧耐震基準による建築物であることを踏まえると新耐震基準を充足しておらず耐震性が低いと考えられ、今のままでは大きな地震で倒壊の危険性があると想定されます。
- 本庁舎の狭あい化
- 市民が利用する窓口スペース、会議室、事務室等の狭あい化も事務量の増加により顕在化し、本庁舎の機能と市民の利便性が低下しています。
- 市民からの各種申請・申告・相談などに対応するためのスペース、職員の打ち合わせや作業スペースなどを十分確保できない状況です。
- 文書保管庫も不足しており、現在は本庁舎と離れた場所にある旧協和中学校校舎を臨時的に使用している状況であり利便性が低下しています。
- 来庁者駐車場は、日常的に満車に近い状態であり、窓口の繁忙期や議会開会期間中、休日前後の日、雨天の日及び入札が執行される日等には駐車場に入れない車両もあり、苦情が寄せられることが多い状況です。
- 行政運営上の課題
- 効率的な行政運営を実現するためには、行政組織の合理化、効率化を図ることが必要ですが、現有の建物を活用する以上、面積と形状が限られていることから、組織機構改革時の部署の配置計画に自由度がなく制約が多い状況となっています。
- バリアフリー(※1)への対応
- 本館は、昭和33年当時の水準で建設した建物であり、バリアフリーに対応できていおらず、バリアフリー化をするにしてもスペースが不足しており、適切な対策を施すことが困難な状況です。
- 本館、新館、別館はエレベーターが設置されていないため、本館にエレベーターを設置したとしても、本館と新館の連絡通路は段差があり階段で移動する状況ですので根本的な解決には至らないと考えられます。
- 本館1階の一部(市民課と税務課間)及び新館1階の一部(保健課及び福祉課中央部)は車椅子等の通行は可能ですが、その他の通路部分は段差があり通行が困難な状況となっています。
- 高齢者、障害者の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)と鹿児島県福祉のまちづくり条例で、現在庁舎には誰でも使いやすい施設とする「ユニバーサルデザイmン(※2)」の考え方が必要とされており、利用される方々への配慮が求められています。
- 市民の安全、安心の確保
- 本市は、度重なる豪雨や台風による土砂災害を経験しており、また将来は桜島大爆発に伴う鹿児島湾直下地震による災害も予想されています。災害発生時には、住民の安全・安心の確保と復旧・復興を図る様々な対策を行うために市庁舎を防災拠点とする必要がありますが、現在の市庁舎は防災拠点として必要な機能を備えた災害に強い庁舎とは言えないと考えられます
- 高度情報化対応への限界
- 近年の急速なICT(※3)化に伴うパソコンやプリンターなどのOA機器の導入により、執務スペースが一層手狭になっています。加えて建物自体もICT化に対応できる構造でないため、露出配線、たこ足配線で対応しているなど、今後の高度情報化対応及び情報管理の安全性等についても課題があります。
- 現在の庁舎には地震や豪雨などの災害時に行政機能を維持するための自家発電装置が未整備であり、電力供給が停止した場合には、庁内ネットワークやすべてのOA機器が機能せず、災害対策本部を含むすべての業務に影響が出て効率的な事務執行に支障をきたす恐れもあり、危機対策にも不安が残るため電力の安定供給を図る必要があります。
第2章/基本方針
本市における新庁舎建設の基本方針については、質の高い行政サービスを提供する機能を備えた庁舎とし、次の5点に要約します。
基本方針
- 市民に親しまれる、やさしい庁舎
- 市民が親しみを持ち、開放的で人や情報の交流の場となる庁舎、また、多様化する市民のニーズに柔軟に対応し、誰にでもわかりやすく利用しやすい庁舎とします。
- 市民生活を守る防災拠点としての庁舎
- 市民の安全、安心な暮らしを支えるため、大雨、台風、地震、これから起こりうる桜島大爆発などの自然災害が発生した時の防災拠点として防災対策機能を備えた庁舎とします。
- 効率的・経済的な庁舎
- 公共施設等の整備にあたっては、垂水市公共施設等総合管理計画に基づき、公共施設にかかるコストを削減し、将来の財政負担の軽減・平準化を図り、総合的かつ長期的視点で施設のマネジメントが行われる庁舎とします。
- また、将来の市民ニーズの変化に伴う組織改編に柔軟に対応でき、レイアウトの自由度が高く、機能性、効率性に配慮し、省エネ対策、長期的な維持管理費の低減など経済効率の高い庁舎とします。
- 市民に開かれた議会機能を備えた庁舎
- 議会も議会基本条例の制定など議会改革が行われ、活発な議会活動を行い市民に開かれた議会をめざしています。
- このため、「開かれた議会、親しみのある議会」に向けて本会議等が容易に傍聴でき、ロビーなどでも議会中継を視聴することができる庁舎とします。
- 地球環境に配慮し、周辺環境と調和した庁舎
- 新庁舎は、垂水のシンボル的な役割が期待されています。
- このため、地球環境に配慮し環境負荷の低減に努め、自然エネルギーの活用や省エネ機器の採用などの省資源対策をはじめ、周辺環境に与える影響、また、本市特有の桜島降灰対策等にも配慮するなど垂水の景観に共生した庁舎とします。
第3章/新庁舎整備の考え方
本章では、庁内検討委員会での検討結果や外部委員会である垂水市新庁舎建設検討委員会からの提言を踏まえ、庁舎機能、庁舎規模、整備位置、事業費及び財源、整備手法及び整備スケジュールに対する考え方をまとめ、本基本構想に定めるべきレベルとして示したものです。詳細については、これから策定される垂水市新庁舎建設基本計画(案)に示すものとします。
庁舎機能
(1)市民に親しまれる、やさしい庁舎
- ユニバーサルデザインに配慮した庁舎
- 庁舎を利用するすべての人々(年齢、性別、身体的状況の違いに関係なく)が安全に安心して快適に利用できるバリアフリーに配慮した施設
- すべての人々にわかりやすい案内機能の充実
- 障害のある方や高齢者の方にも配慮し、駐車・駐輪スペースから庁舎内へスムーズに移動できるような動線の確保
- 市民にやさしい窓口の配置
- 利用者が多い窓口は、利便性に配慮し低層階に配置
- 関連する窓口を可能な限りワンフロアに集約して配置
- 総合案内、ワンストップサービス(※4)をめざした窓口の充実
- プライバシーへ配慮した相談窓口の充実
- 市民が親しみを感じる施設機能
- 市民が気軽に集い出会いの場となるオープンスペース
- 情報、展示コーナーの充実
- 乳幼児を連れた方が利用しやすい施設の整備
(2)市民生活を守る防災拠点としての庁舎
- 災害から市民を守るため災害対策本部としての耐震性や安全性に優れた庁舎
- 様々な災害に対応できる機能性を備えた防災拠点施設としての機能の確保
- 災害時の必要物資の備蓄機能の確保
- 非常用電源の確保
(3)効率的・経済的な庁舎
- 執務の効率性に配慮した部署の配置
- 将来の行政需要の変化等による組織改編に柔軟に対応できるフロアレイアウトの自由度が高い庁舎
- 関係部署間の連携や情報共有に配慮した配置
- 来庁者と職員の利用空間が明確にされたスムーズな人の流れになる空間設計
- 情報化への対応
- 高度情報通信機器導入に対応したフリーアクセスフロア(※5)の採用
- 高度情報化に対応した高度なセキュリティ機能の確保
- 施設管理の効率化によるコスト削減
- PPP/PFI(※6)等、民間の資本、経営能力及び技術力を活用した施設管理の効率化やサービスの検討
(4)市民に開かれた議会機能を備えた庁舎
- インターネット配信や議会中継システムを活用した開かれた議会運営機能
- 誰もが容易に議会を傍聴でき、委員会室等を多目的に利用できる設計
- 活発な議会活動が行えるよう情報通信環境の整備
(5)地球環境に配慮し、周辺環境と調和した庁舎
- 環境負荷低減として設備機器はLED照明など長寿命機器や省エネ機器の導入
- 自然エネルギー活用として太陽光発電の導入や庁舎内への自然採光の検討
- 周辺環境に潤いと憩いを与える緑化の整備
- 桜島降灰に対応できる勾配屋根や降灰除去をし易い排水設備の導入
庁舎規模
(1)基本指標等について
新庁舎の規模の算定根拠となる将来人口や職員数等を次のとおり設定します。
- 将来人口
- 将来人口は、垂水市人口ビジョンにおける供用開始時点の直近値である平成32年推計人口14,374人とします。
- 将来職員数の推計
- 職員数は、平成28年4月1日時点の職員数235人を基準として庁舎面積を算定します。なお、新庁舎への配置職員数は特別職、臨時職員を含め、約250人とします。
- 議員数
- 議員数は、「垂水市議会議員定数条例」に定める14人とします。
- 組織
- 組織構成は、将来の予測が困難であるため、現時点での組織構成をもとに想定します。
- 庁舎タイプ
- 庁舎タイプは、市民サービスの向上、庁舎の維持管理費の削減、業務効率から、すべての課、機能が揃った統合的な庁舎を想定します。
(2)延床面積の目安
新庁舎の延床面積の設定は、必要な機能は確保しつつ、財政状況や将来人口等を踏まえて、適正規模となるよう算出することが必要です。このため、本基本構想においては、庁内検討委員会がまとめた「新庁舎建設の検討結果報告書」で設定された延床面積を上限値の目安として示します。
(3)敷地面積の目安
新庁舎を整備する敷地面積の設定は、十分な駐車場の確保をはじめ、災害時の対応や市民が集い交流を深めるオープンスペース等の敷地を確保することが求められております。このため、本基本構想においては、庁内検討委員会がまとめた「新庁舎建設の検討結果報告書」で設定された敷地面積を上限値の目安として示します。
整備位置
(1)新庁舎位置の検討項目
庁舎の位置は、事業費の算定や建設スケジュール等の建設計画において、多大な影響があります。
また、市民の利便性や市街地形成への影響等を考慮すると十分な調査に基づく検討作業が必要です。
このため、次に示した評価項目に対して、内部評価及び市民目線による外部評価を行い、整備位置を決定することとします。
- 市民の利便性
- 計画の経済性と実現性
- 防災拠点・安全性
- まちづくりと整合性
(2)新庁舎建設候補地
新庁舎建設の候補地は、建設スケジュール及び財政への影響を考慮し、次の候補地とします。
事業費及び財源
庁舎建設に関する基本的な考え方は先に5つの基本方針として示しましたが、建設にあたっては、健全な財政運営の観点から、将来の住民に対する負担をできるだけ最小にしていくことも十分配慮していく必要があります。
本基本構想においては、整備位置やスケジュールが決定していないことから、建物整備に要する経費のみを試算し、次のとおり、概算事業費及び財源の考え方として示します。
(1)概算事業費/約30億円
(2)財源の考え方
- 市有施設整備基金の活用
- 交付税措置のある地方債の活用(公共施設等適正管理推進事業債/市町村役場機能緊急保全事業)
事業手法
事業手法の検討にあたっては、施設整備の目的や機能確保、市財政への影響をはじめ、コスト削減やサービス向上の視点から総合的に判断していく必要があります。
このため、次の整備手法について検討を行い、垂水市新庁舎建設基本計画(案)に示します。
(1)設計・施工分離発注方式
- 公共建築工事では、従来から最も多く採用されている整備方式です。
- この方式は、設計者・監理者・施工者が完全に業務を分担し、それぞれが独立して業者選定される仕組みで、品質管理の視点からは最も安定していると考えられます。
(2)設計・施工一括発注方式
- DB(デザインビルド)方式とも呼ばれ、民間工事では工事会社の設計施工で広く行われています。
- この方式は、実施設計と施工を同時に一括発注・契約する方式で、施工技術の改善や建設コストの削減など、事業者からの幅広い提案を早い段階より取り入れることができるので、建設コストや工事工程の合理化が可能となります。
(3)設計・施工・維持管理一括発注方式
- PFI方式とも呼ばれ、設計・施工・施設の維持管理及び運営を含め一体として発注する方式で、民間資金、経営能力及び技術能力を活用することにより、効率的かつ効果的に実施される方式です。
整備スケジュール
新庁舎建設のスケジュールは、早急な整備が求められていることや有利な地方債である公共施設等適正管理推進事業債(市町村役場機能緊急保全事業)の活用を考慮し、平成34年度供用開始を目標に設定します。
年度 |
主な取り組み等 |
平成28年度 |
庁内検討委員会 |
平成29年度 |
外部検討委員会設置、基本構想・基本計画策定 |
平成30年度 |
基本設計 |
平成31年度 |
実施設計 |
平成32年度 |
建設工事 |
平成33年度 |
建設工事 |
平成34年度 |
供用開始 |
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