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更新日:2024年5月22日
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垂水市立医療センター垂水中央病院
竹中俊宏院長、循環器内科/桑波田聡部長
連日のテレビや新聞報道での新型コロナウイルスに関する話題は、今年2月以降途切れることはありません。また、緊急事態宣言により外出の自粛を求められ、それが解かれても「三密を避ける」「外出時のマスク」「手洗いや消毒の徹底」「ソーシャルディスタンスの確保」など、新たな社会的ルールが出来上がり、戸惑っておられる方も多いかもしれません。特に、人との接触を避ける生活が推奨され、家族や友人とも距離を置かなければならない現状に「いつまで続けなければいけないのだ?」と憤懣(ふんまん)やるかたない思いの方もおられるのではないでしょうか?そのお気持ち十分お察し致しますが、それでも今一度その必要性について説明させていただきたいと思います。
新型コロナウイルスは、なぜこんなにも恐れられているのでしょうか?
それは「新型」の名の通り、今まで人間が知らなかった未知の病原性のウイルスだからです。この新型コロナウイルスは、インフルエンザウイルスと比較されることもありますが、インフルエンザウイルスは、その型が変わることはあれ、毎年季節性に流行することや、かかった後にそのウイルスがどのように人間の身体に影響を及ぼすのか、私たちは「経験則」として予測を立てることができます。また、インフルエンザウイルスは、ワクチン接種により感染を防いだり、感染したとしてもその症状を軽く抑えたりすることができます。さらに、体内でウイルスの増殖を抑える薬もあり、発症予防を目的に薬を使用することもできます。
つまり、予防も治療も、私たち人間にとって対応策があるウイルスと言えます。もちろん、毎年インフルエンザでお亡くなりになる方もおられるので、万全の注意を払う必要はありますが、私たちはインフルエンザウイルスに関しては、ある程度付き合い方がわかっているのです。
これに対して、新型コロナウイルスは、私たちが今まで出会ったことのない、全く新しいウイルスです。私たちは今、この「新参者」のウイルスについて知るために、世界中で情報を集めている段階なのです。
新型コロナウイルスの感染が我が国で拡がり始めた当初は、「新型コロナウイルスによる死亡率は低い」とか「若年者では重症化することは少ないので、若者はかかっても大丈夫」といった、科学的根拠に乏しい情報があふれていました。
その後、今日までにこのウイルスについて多くのことが明らかになってきてはいるものの、現時点ではまだまだ新型コロナウイルスの全容は解明されておらず、このウイルスが引き起こす病状を検証している段階に過ぎません。
さらに、このウイルスに感染して5年、10年、20年と長い年月が経った時に、どういう後遺症がでるのか、身体にどういう変化が生じるのか、誰も経験していないので「分からない」のです。
つまり、今の時点で「この感染症のその後」を見極めることはとても難しく、まさにこれから研究されていくものなのです。
もちろん、これまでに分かってきたこともあります。
主な感染経路は、ウイルスに汚染された所に触れ、その手で目や口、鼻を触ることでウイルスが体内に侵入する「接触感染」や、感染者の咳やくしゃみなどで飛び散った唾液の飛沫を吸い込み感染する「飛沫感染」であることが明らかになっています。そのほかにも、発症すると高熱が出て風邪やインフルエンザに似た症状になること、味やにおいを感じなくなることがあること、急激に肺の機能が低下して死に至ることがあること、感染しているのにこれといった症状があらわれないことがあることなどです。
鹿児島県の感染者数は、6月末時点で11名と比較的少ない数で推移していましたが、7月になり急激に増加し、7月19日時点では165名となっています。垂水市民の皆さんの中には「自分たちは大丈夫」と思っている方ももしかしたらおられるかもしれません。しかし、予測のつかないウイルスに「絶対安全」はあり得ない、ということを今一度肝に銘じてください。
まだまだ暗中模索の現状では、とにかくこのウイルスを身体に入れないこと、この感染症にかからないことが、一番の得策なのです。
正しい手洗いできていますか?
感染症の専門家や医療従事者が必ずやっている、一番基本的ではありますが、最も有効な感染予防、それは「手洗い」です。
ウイルスは、手や身体に付着しただけでは感染しません。ウイルスの付いた手が顔に触れ、鼻や口や目に入ることによって、体内に侵入します。そのため、まずは手についたウイルスを石鹸と流水で洗い流すことが重要なのです。今は一時的に入手が難しくなっていますが、消毒用エタノールを手指に十分にすりこむことでも、ウイルスは破壊できます。
外出先から帰ってきたら「15秒以上かけて丁寧に手洗いをする」だけでなく、トイレの後や食事の前はもちろん、「気が付いたときに手洗いをする」くらいに頻回に入念に手洗いを心がけると良いでしょう。手荒れが気になる方は、手洗いの後にハンドクリームで保湿してください。
1/マスクを正しくつける!
マスクは、次の3つの点において有効です。
最近、診察室でお会いする患者さんを拝見していて、気が付いたことがあります。それは、「マスクの正しいつけ方」ができていない方が多いということです。せっかくマスクをしているのにこれでは役に立たないなと残念に思うことがあります。他人と接する場面では、正しくマスクをしているとお互いに安心できます。
今一度、正しいマスクの着用法を確認して実践してください。
マスクには上下もあれば裏表もあります。上下逆さまや、裏表を逆につけている方も多いです。きちんと確認して装着しましょう。また、鼻が隠れていない方も多く見受けられます。マスクは鼻からあごまでしっかりとカバーしてこそ、感染防御に有効です。
顔に密着させなければ効果は激減します。ノーズフィッターという鼻の部分に針金がついたマスクは、きちんと顔のカーブに合わせてつけることが重要です。正しく装着されたマスクは息漏れせず、少し息苦しいかもしれません。
2/外側は触らない!
マスクは一度つけたらむやみに触らない!マスクは口と鼻の前にあるフィルターだと考えてください。呼吸で息を吸い込む時に、その空気中にウイルスがあれば、それが最も高濃度に付着しているのがマスクの外側です。マスクの外側は触ってはいけません。マスクを外す時にも、マスクの外側は触らず、耳掛けの部分を持って外し、マスク専用にしたビニール袋やケース等に入れるようにしましょう。直接ポケットやカバンに入れると、その部分がウイルスに汚染されてしまいます。
3/マスクと熱中症対策
「マスクは一度つけたらむやみに外さない!」と申し上げたばかりですが、気温が高いこの夏の時期は、熱中症にも気をつけなければなりません。特にマスクをつけていると、吐く息に含まれる水分で口の中が潤されるために、喉の渇きを感じにくくなり、身体の脱水を起こしやすくなります。例えば「1時間ごとに水を飲む」のように自分で時間を決めて、意識して水分を摂取するようにしてください。また、周りに人がいない場所での運動時や、家の中で過ごす時にはマスクを外すなど、場面に応じてマスクの着脱を考えることも大事です。
4/新習慣とエチケット
患者さんが診察室に入られるとき、わざわざマスクを外される方がおられます。これはちょっと前までなら、「顔を見せずに他人に接するのは失礼」という礼儀にかなった行為でした。しかし、この新型コロナの状況ではむしろ「マスクは外さない」というのが大事です。医師や看護師が「マスクを外してください」とお伝えするまでは、どうぞマスクはつけたままでいてください。もちろん私たち医療スタッフも、新たな礼儀としてマスクをつけたまま対応させて頂きます。
5/withコロナ
私たちは、もうしばらくは「ワクチン」や「特効薬」といった「鎧」や「武器」を持たずに、新型コロナウイルスという得体の知れないウイルスと生活を共にしなければなりません。まずはしっかり予防を心掛けてください。そして、もしご自身や身近な方の感染が疑われたら、すぐに電話で相談して、しかるべき指示、検査や治療を受けてください。同時に、それ以上感染を拡げないために細心の注意を払ってください。
また、近所の方や知り合いが感染したとしても、噂やデマや誹謗中傷に惑わされることなく、冷静に対応してください。
皆さんの身近にある、かかりつけのクリニックや垂水中央病院のスタッフは、これからも垂水市民の皆さんの健康を守る砦として、医療の分野からサポートして参ります。ともにこの難局を乗り越えていきましょう。
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